今更ですが、先日、読んでみたいと思っていた大ベストセラー「銀河英雄伝説」の小説全巻を大人買いしました。今5巻目ですが、圧倒的に面白いです。「銀河英雄伝説」は、田中芳樹によるSF小説で、原作は累計発行部数が1500万部を超えるベストセラーですが、まったく納得です。
なぜこんなに面白いのか、3つの理由を挙げてみたいと思います。
理由1)国家や権力、戦争についての深い知見と洞察
アニメや漫画もありますが、小説の奥深さには到底及びません。なぜなら、「銀河英雄伝説」はストーリーを追うことそのものも面白いのですが、小説の随所に出てくる田中芳樹氏の国家や権力に対する様々な知見が非常に含蓄に富んだものだからです。それは、田中氏自身の解説としてだったり、登場人物に語らせたりして随所に登場します。備忘録として幾つか名言と思われるものを掲載しておきます。
盗賊には三種類ある、とは誰が言ったことであっただろうか。暴力によって盗む者、知恵によって盗む者、権力と法によって盗む者・・・・
民主主義の制度は間違っておらん。問題は、制度と、それをささえる精神が乖離していることだ。現在のところ、建前の存在が本音の堕落をようやく防いでいるが、さて、それもいつまでもつか・・・(ビュコック提督)
実際、建国の理念と市民の生命が守られないなら、国家それ自体に生存する理由などありはせんのだよ(ビュコック提督)
忠誠心というものは、いわば鏡に映った自己陶酔であるから、「鏡」の役割をする主君には、美しい像を映してほしいというのが、宮仕えする人間の願望であろう。
愛国心が人言の精神や人類の歴史にとって至上の価値を有するとはヤンは思わない。同盟人には同盟人なりの愛国心があり、帝国人には帝国人なりの愛国心がある。ー結局、愛国心とは、ふりあおぐ旗のデザインがたがいに異なることを理由として、殺戮を正当化し、ときには強制する心情である、多くは理性との共存が不可能である。とくに権力者がそれを個人の武器として使用するとき、その害毒の巨大さは想像を絶する。
ウィキペディアの解説によると、本小説の特徴の一つは後世の人間が書いた歴史記録という体裁をとっているとのことなので、1歩下がった視点から教訓めいた解説が多く入るのも合点がいきます。
理由2)圧倒的なスケールと迫力の艦隊戦
現状、5巻まで読み進めましたが、不敗の提督ヤン・ウェンリーと天才ラインハルトの息も詰まるような艦隊戦の駆け引きは最高に面白いです。1巻でヤン・ウェンリーとラインハルトが最初の戦闘、2巻でのイゼルローン回廊の戦い、3巻の帝国、同盟それぞれの内戦とクーデターの戦い、4巻は5巻の布石のような位置づけですが、5巻のヤン・ウェンリーとラインハルトの全面対決まで、一気に読み進めることができます。
理由3)魅力的な登場人物
不敗の提督ヤン・ウェンリーと天才ラインハルトを始め、帝国側では最強の副官キルヒアイス、首席秘書官ヒルダ、疾風のウォルフ・ミッターマイヤー、策謀家オーベルシュタイン、金銀妖瞳ロイエンタール、同盟側では、ヤンの養子ユリアン、副官フレデリカ、最強の事務処理男キャゼルヌ、老提督ビュコック、撃墜王シェーンコップ、食えない政治家トリューニヒトなど、とにかく登場人物が多彩で魅力的です。
まだ子供達が読むには難しい本の部類に入りますが、すっかり本の虫に育った次男ならば、中学生になったら手に取ってくれるかもしれません。