2017年度公開予定のリメイク版「ベン・ハー」が2016年度中に機内で視聴できました

製作費用54億円、製作期間6年を費やし、1959年に大ヒットを記録したチャールトン・ヘストン主演、ウィリアム・ワイラー監督の不朽の名作『ベン・ハー』。もともとの作品は、古代ローマ帝国の圧政とキリストの死を背景に、ユダヤの豪族の息子ベン・ハーの数奇な運命を描いた歴史スペクタクル映画。「アカデミー賞」では作品賞、監督賞をはじめとする最多11冠を達成した名作です。

ベン・ハー (字幕版)

僕にとっては、中学生くらいの時に父がレンタルビデオで借りてきて、家族で視聴し、物凄く感動した思い出の一作です。この『ベン・ハー』が、現代の最新映像技術でリメイクされ、2017年、日本全国にて公開される、というので楽しみにしていました。

ところが!2016年12月上旬に海外出張で飛行機に乗ってみると、なんと機内でリメイクされた『ベン・ハー』が視聴できるではありませんか!!これは観るしかありません。(以下、ネタバレ注意です)

再生した最初に、「この作品はオリジナル版と内容が変えられています」みたいな文言は表示されて「あれ?」と思いながら視聴しました。さすが、最新の映像技術を駆使しただけあって、すごい迫力。しかし、話が進んでいくに従って、オリジナル版と比較し、どの部分が変えられたのかが明らかになるにつれて、僕の中の「駄作スコア」がどんどん上がっていき、視聴し終えた後、観たことを心底後悔しました。

リメイク版「ベン・ハー」が駄作だと思った理由

結論から言うと、このリメイク版「ベン・ハー」は、1959年版『ベン・ハー』の中心を成す「メッセージ」を抜いた、中身スカスカの単なる娯楽作品です。

もちろん、映像の美しさ、戦車レースの迫力は1959年版には比較になりません。しかし、中心を成す「メッセージ」が骨抜きにされています。

そもそも「ベン・ハー」は、アメリカのルー・ウォーレスが1880年に発表した小説です。ルー・ウォーレスは南北戦争のときの北軍将軍で、南北戦争後の準州知事時代に「ベン・ハー」を書き上げています。原題は「Ben-Hur: A Tale of the Christ」。日本語にすると、「ベン・ハー:キリストの物語」となります。そう、「ベン・ハー」はキリストの物語なのです。

小説はもちろん、1959年版には、ベン・ハーの人生と並行し、随所にイエス・キリストが登場し、物語の中で非常に重要な役割を担います。しかし、リメイク版には、全くイエス・キリストが出てきません。

最後のシーンでは、もともとは、戦車レースの激闘の末、ライバルのメッサーラを倒したベン・ハーは、瀕死のメッサーラから母と妹が当時不治の病だったハンセン病に感染して隔離場所にいることを知らされ、最終的にイエス・キリストの奇跡の力によって癒されます。しかし、リメイク版では最後にベン・ハーとメッサーラが仲直りをしたと思ったら、最後に元気な妹と母親、そして妻が何の伏線もなくベン・ハーに再会してめでたしめでたし、という終わりでした。汗

安っぽい復讐と許しの物語になってしまったリメイク版ベン・ハーは、単なる娯楽作品に成り下がったと思いました。本当に残念です。

1959年版は、アマゾンビデオで視聴できるようです。プライム会員なら無料、レンタルなら400円。視聴されたことがなければ、是非、