綾瀬はるか主演の人気ドラマ、精霊の守り人シリーズ。僕は最初のシーズン1とシーズン2の最初だけドラマを見ただけでした。

しかし、先日ブックオフへ行った折、200円コーナーでシーズン1の続編になる闇の守り人を見つけて購入。そのまま完全に守り人シリーズにはまってしまいました。勢いで全巻を購入。あっという間に読み終えてしまいました。

原作小説を読んで気づいたドラマの残念なポイント3つ

原作の小説を全て読んで、ドラマとの残念な違いを色々と見つけることになりました。

原作とドラマの違いその1:ドラマは時系列がぐちゃぐちゃ

原作の小説を読んでいくとすぐに分かりますが、この小説は二人の主人公が存在しています。バルサとチャグムです。そして、バルサがメインの時は「●●●の守り人」というタイトルで、チャグムがメインの時は「●●●の旅人」というタイトルになっています。以下が時系列で並べた各シリーズとメインの主人公です。

主人公
流れ行く者 バルサ
精霊の守り人 バルサ、チャグム
闇の守り人 バルサ
夢の守り人 バルサ、チャグム
虚空の旅人 チャグム
神の守り人〈上〉来訪編 バルサ
神の守り人〈下〉帰還編 バルサ
蒼路の旅人 チャグム
天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編 バルサ、チャグム
天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編 バルサ、チャグム
天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編 バルサ、チャグム

しかし、ドラマでは以下のように取り上げている内容は原作の小説の時系列とは異なっています。

 シーズン 対象となる原作
シーズン1

精霊の守り人

精霊の守り人
シーズン2

悲しき破壊神

神の守り人〈上〉来訪編
神の守り人〈下〉帰還編
蒼路の旅人
シーズン3

最終章

闇の守り人
天と地の守り人〈第1部〉ロタ王国編
天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編
天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編

シーズン1はもちろんそのままですが、3巻と4巻の「夢の守り人」「虚空の旅人」は取り上げられていません。ネタバレになるので詳細は触れませんが、3巻と4巻の内容は実は5巻以降の様々な伏線に繋がる大切なストーリーが含まれています。しかし、これらはドラマでは省かれてしまっています。

また、シーズン2の内容は本来別れていたはずの「神の守り人」と「蒼路の旅人」が混ざってしまっています。ドラマを見ていたときの違和感は、本来時系列がしっかりと別れていたはずのものを混ぜ合わせてしまったことによるのだと、原作を読んで気付きました。

シーズン3については後述します。

原作とドラマの違いその2:死んだはずの人が生きている

闇の守り人の内容は、ルイシャと山の王を巡るカンバルの王国の秘密を中心に、バルサが自分の過去と向き合いながら、ジグロと逃げることになった過去の陰謀にまつわる非常に重要な内容です。

この内容を、原作「天と地の守り人〈第2部〉カンバル王国編」と混ぜてしまったのがシーズン3のポイントとなります。そして、混ぜる際に行った重要な変更点が、原作では第1巻で既に死んでいたはずのカンバルの王ログサムが生きている、という点です。

枠が限られているドラマの中で、必要な話をうまく取り込むという意味ではかなりの妙案だったと思います。しかし、原作を読むと、復讐の相手を失い、怒りの矛先を失ってしまったことによる葛藤が、バルサという人間を作り上げる非常に重要な要素であることが分かります。

ドラマでは、ログサムが生きていることにより、この怒りが現在進行形のものとなっています。これは正直、原作ファンとしてはちょっと受け入れられません。

ちなみに、闇の守り人は漫画にもなっています。

原作とドラマの違いその3:日本ドラマの限界か。俳優が全員日本人

天と地の守り人〈第3部〉新ヨゴ皇国編の上橋さんのあとがきを読むと、指輪物語のような地平線がどこまでも広がっていくようなスケールの話を書きたかったと話されています。

原作を読むと、そのイメージの通り、多くの国や民族が登場し、広いスケールの話であることがよく分かります。

しかし、ドラマは、服装はもちろん変えてはいるものの、俳優全員が日本人のため、どうもそういった広がりを表現するのが苦しいところがあります。

あと、キャスティングについてどうしても許せないのは、マーサ。小説では「小柄で白髪の初老の商人」ですが、ドラマで演じているのは「太った黒髪」の渡辺えりです。原作通りなら、どう考えても泉ピン子の方がイメージに近いと思うのは僕だけでしょうか。

逆にどハマりしていると思ったのはジグロを演じた吉川晃司。これは最高の一言です。このキャスティングには拍手喝采を送りたいと思います。

原作小説が楽しすぎる3つの理由

守り人シリーズを2週間くらいで全巻読んでしまいましたが、40のおじさんでも本当に楽しめました。なんでこんなに面白いのか、3つ理由を考えてみました。

原作が楽しい理由その1:守り人シリーズには悪者が登場しない

守り人シリーズには非常に多くの登場人物が出てきます。しかし、どの人物を取り上げても、単純な善と悪で切り分けられるような人物は出てきません。

それぞれの人物は、与えられた環境の中でもがき、最善の結果を得ようと努力し、生きようとしています。一見卑怯な手を使うような人物も、様々な理由があってそういった手段を取っています。

考えてみると、これは現実の世界と全く同じではないかと思います。

原作が楽しい理由その2:練り込まれた世界観

守り人シリーズはファンタジーというカテゴリに入るようですが、このファンタジーの部分が実に練り込まれています。

現実世界と重なって存在ているナユグ。このナユグが守り人シリーズを構成する重要なもう一つの世界になりますが、よくもここまで精霊の世界を作り込めるものだと思います。

また、食事や服装など、民俗学を学んだ著者ならではの知識が色々な所で垣間見ることができいます。守り人シリーズを読んでいると、本当に登場する文化や言語、食事が世界のどこかにあるのではないかと錯覚を覚得てしまいます。

世界の全体像を理解するにはガイドブックがが出ています。このガイドブックには、天と地の守り人の後、タンダと結婚したバルサの後日談も短編として入っています。

食事については、料理の達人からなる「チーム北海道」が、手近な食材と人一倍の熱意をもって、物語の味の再現を試みた面白いレシピ本も出版されています。

原作が楽しい理由その3:読みながら風景が見える、読みやすい文体

上橋さんは児童文学から初めているせいか、とても読みやすい。また、各巻の冒頭の表現はどの巻も考え抜かれているのか、感心してしまうような表現です。

また、様々な登場人物の心の機微の表現も本当に見事だと思います。上橋さんの文章を読むと、僕自身の人物や風景などの観察の浅さを痛感します。

まとめ

という訳で、長々と何が言いたいのかというと、守り人シリーズは原作の小説が絶対にオススメだということです。小説は文庫本と軽装版があります。

僕が買ったのは文庫版ですが、こちらは文字がちょっと小さいので、大人向きです。

子供に読んで欲しいなら、サイズの大きい軽装版がオススメです。